零〜黄昏の唄〜 序章-3



かしましい声と話し方からすると、スタッフか掃除のおばちゃんのようだ。
周囲に響き渡るほどの大声で話しているため、控え室にいた寂花にも、その二人の会話は耳に届いた。

「そういえば、今朝のニュース見た!?」
「う〜ん・・・?・・・・・・あぁ〜あの大物芸能人が離婚したやつね!?――でも、私は最初から長続きしないと思って――。」
「違うわよ!・・・ほら・・・・・・【高校生の女の子】のやつよ・・・・・・あったじゃない・・・。」
「もしかして・・・・・・あの――【事件】の話・・・・・・?」

先ほどまで、辺りかまわず響いていた二人の話し声が、急になりを潜める。
話を持ち掛けた方の女性が、甲高い声を出来るだけ抑えて、周囲に聞き取られないようにしたからだ。
聞き役の女性も、それにならい声のボリュームを下げる。
【事件】というキーワードが妙に気になり、寂花はなるべく女性達の会話が聞き取れるように、
扉に近づいていって、僅かばかりの隙間を作る。
盗み聞きするという行為にたいして、後ろめたさを感じるが好奇心には打ち勝つことは出来なかった。

「私、あの【事件】の内容をテレビで見てて、気分が悪くなったのなんて、初めてだわよ・・・。」
「分かるわ・・・あんな【酷い惨状】聞けば、誰でもそうなるわよ。」
「ほんと・・・最近、世の中どうかなってんじゃない!?見てよ!私、想像しただけで鳥肌立ってきたわ!」
「・・・・・・なんで、あんなことが出来るのかしらね。だって・・・・・・・・・【目が――無かった】・・・・・・・・・そうじゃない。」
「・・・・・・・・・。」

聞き役の女性と寂花が、小さく息を飲み込んだのはほぼ同時だった。


会話の途中、二人が不意に足を止めたことで、廊下全体に重苦しい沈黙と静寂が支配する。
ニュースの内容を知っている女性達でさえ、思わず言葉を失ってしまう程の惨状とは一体どんなものなか?
寂花は、否が応でも二人の会話の続きに集中してしまう。
その間と静寂を引き継ぎ、耳に残る甲高い声で女性は話を続ける。

「それに、その女の子には【無数の切り傷や刺し傷】があったって話よ・・・・・・酷い話よね――。」
「もう止めましょうよ!この話・・・誰が聞いてるか分からないわ!
だって【犯人、捕まってない】っていうし、怖いわ・・・・・・。」
「そんなこと心配してたの?ここから何千キロも離れた九州で起こった話よ。犯人がこの辺りでうろう

ろしてるはず無いじゃない。」
「・・・・・・まぁ・・・・・・それもそうだけど・・・。」


話に一区切りついたことで、立ち話を続けていた二人は、どちらとも無くゆっくりと歩みを開始する。


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