俺の名前はソリッドスネーク。今日はある重要な任務を任されている。
できるだけ音はたてない。
そう自分に言い聞かせドアを開ける。扉のむこうにはベッドに横たわり、幸せそうな顔で眠る私の依頼主が。
とりあえず私は椅子に座り、彼を見つめる。
自分からは、依頼人を起こしてはいけない。誰が決めたのかは知らないが、これはもうこの世界の常識だ。
三十分後、彼が起きた。私は顔を近づけささやく。
「今日一日お供させていただきます。ご安心下さい。あなたの命は私が守ります」
彼は寝ぼけまなこをこすりながら、黙ってベッドから降り部屋の外へ出て行く。私は急いでそれを制す。
「いけません。少しお待ち下さい。安全を確かめます」
いつ、誰に狙われる分からない彼の命。部屋を移動する時などは、自分たちが先に外へ出る。
これを守らないと依頼主の命は幾つあっても足らない。
ドアを開け、辺りを確認する。ここで変に銃などを持ってたら逆に怪しまれてしまう。
一般人にこの事が露見すると後々困った事になる。
「どうぞ。廊下は安全です」
彼は黙ったまま外に出る。その歩き方も普通のそれとは、どこか違う優雅な歩き方。
自由な彼は私なんて存在しないかのように勝手に歩き回る。
その度に、いちいち安全を確認しないといけないのは面倒くさい。
だが、われわれが預かってるのは命。それを思うと疲労感なんて無になる。
今度は彼は外に出たがっている。もちろん言葉には出さないがさっきからしきりに外を眺めている。
彼なりに我慢しているのだろうか、ならそれは間違いだ。
もちろん外は危険だが、それを制する権利なんて無い。私達はただ命をお守りする。それが仕事なのだ。
私が玄関へのドアを開くと彼はいそいでやってきた。そうとう外へ出たかったらしい。
外へ通じるドアに厳重なロックが掛かっていると、これまた変に思われるため、このドアには普通の鍵を使用している。
まずは私が外に出る。その後、安全を確認したら彼は出てくる。
彼は久しぶりの外が嬉しいようだ。しかし、私がついて来る事は気にいらないようだ。しょうがない。
例え、依頼主に嫌われようと私は依頼主を守る。何度もくどいようだが、それが仕事だ。
誰も居ない通りを、私と彼が歩く。すると道端に自動販売機とゴミ箱があった。
彼は喉が乾いたのか、それともただの気まぐれか、自動販売機に近づいていく。
その時、私の中の何かが叫んだ。
「危ない!」
私は駆けだし彼を追い抜いてゴミ箱にスライディングを決める。少しでも、彼からゴミ箱を遠ざけなければという使命。
散らばるゴミ、驚いて飛びのく不思議そうな彼、何故か死にかけの私。途切れ途切れの声で呟く。
「爆弾ですよ…… よくある……手口です…… それよりご無事で良かった、どうも私はダメみたいです……」
彼の手を握り締めた私の手が、糸が切れたかのように地に落ちる。
ふと、くもりガラスを通した曇った光が鮮明な明かりに変わった。そこからは身を乗り出したおばさんが。
私は急いで彼を抱きかかえ逃げ去る。
散乱したゴミに、戸惑う猫、そして倒れている三十過ぎたおっさんを見て、彼女が何を思うか。
ただの遊びです。シークレットサービスごっこです。警察に対してそう言ってる自分の姿が脳裏に浮かぶ。
とりあえず警察だけは勘弁。猫を抱えて家へと全力疾走。
「ん? メイリンの猫連れ出して何やってんだいスネーク?」
オタコンがそう言ってきた。
俺、何やってんのかな……
作者:っぽこ様
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